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腰椎椎間板ヘルニア Lumbar disc herniation

腰椎椎間板ヘルニア

疾患の定義と原因

椎間板は、ゼリー状の髄核(ずいかく)という組織が線維輪という外層に囲われてできており、各脊椎をつなぎ、クッションの役目もしています。
線維輪に亀裂が生じ、髄核が押し出され突出した状態を椎間板ヘルニアといいます。
突出した組織が神経を圧迫すると症状が出ます。
椎間板が変性し断裂して起こりますが、悪い姿勢での動作や作業だけではなく、喫煙や遺伝的要素でヘルニアが起こりやすくなることが知られています。

主な症状

急性腰下肢痛
坐骨神経痛といわれるような臀部(おしり)から足部(足)にかけての痛みが急に出現します。
腰の前屈動作(前かがみ)や椅子に座った時に強くなります。
下肢筋力低下
下肢の力が入りにくくなり、つまづきやすいなどの運動障害が起こることがあります。
膀胱直腸障害
稀に、馬尾(ばび)とよばれる腰椎部の神経がヘルニアにより強く圧迫されると排尿や排便の障害を生じることがあります。緊急手術を要する場合があります。

治療

保存療法

治療は、症状が軽度の場合は保存療法(薬物療法など)が原則で、神経根ブロック療法がおこなわれる場合もあります。
最近では、突出したヘルニアが自然に無くなったり、小さくなったりする場合があることもわかってきました。
手術をせずに保存療法で治癒する場合が大部分です(7~8割程度と言われています)

手術療法

適切な治療にも関わらず下肢の痛みが治らない場合、下肢の麻痺が進行する場合や排尿、排便障害がでてくるような場合には、手術療法が必要となります。
腰椎椎間板ヘルニアに対する手術療法は確立された方法で、治療後の経過は比較的良好です。
当院では、主に「FESS、FED」を行っています。

FESS(Full-Endoscopic Spine Surgery : 完全内視鏡下脊椎手術)
FED(full-endoscopic lumbar discectomy): 全内視鏡下腰椎椎間板切除術
完全内視鏡下脊椎手術は直径7mmの内視鏡を使用して行う最小侵襲手術です。8mmの皮膚切開から局所麻酔下に安全に行うことができる、患者さんに優しい手術です。
腰椎手術の従来法は、例えば腰椎椎間板ヘルニアであれば、全身麻酔をかけて背中の真ん中を縦に5~6cm切開し背筋を骨からはがし、骨を削って神経をよけ、ヘルニアを摘出する方法でした。しかし、1~2週間の入院期間が必要なことから、超早期の社会復帰を希望する方には適用困難であること、筋肉の一部を剥がすことからスポーツ愛好家には不向きであること、全身麻酔が必要なことから内科的な合併症のある方には適用できないことなど、いくつかの制約がありました。
FESSは局所麻酔下に8mmという小さい傷から、直接病変へ到達することができる全く新しい手術方法です。手術の流れですが、まず腹臥位にて穿刺針を挿入して上関節突起、椎間板に局所麻酔を行います。続いてガイドワイヤーに沿って内視鏡を椎間孔に誘導します。生理食塩水で灌流しながら、必要に応じて3mmのハイスピードドリルで骨を削り、鉗子でヘルニアを切除します。術中に患者様に下肢の痛み、痺れの状態を確認しながら、1時間程度で終了します。利点としては術直後から歩行可能なこと、術後1-2日で退院可能なこと、日常生活、仕事への復帰が早いことです。

脊椎に不安定性を伴う場合や椎間孔型など一部では、脊椎固定術を行う場合があります。当院ではMIStと呼ばれる低侵襲脊椎手術手技(身体への負担が小さい手術の方法)を積極的に取り入れています。

MIS-TLIF(後方固定術の一つ)
後方(背中側)から神経に対する圧迫を取り除き、インプラントを用いて不安定な脊椎を安定化させます。従来の後方固定術より皮膚や筋肉に対するダメージの少ない方法を選択しています。手術当日から歩行が可能で、10~14日後には退院可能です。
MISt学会