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脊椎外科医のせぼね塾④腰の疲労骨折 ~腰椎分離症~

 

 一生のうちで最も骨折しやすい骨はせぼね(脊椎)だと、本コラムの③で述べました。通常、骨折を起こすには一度に強い外力が作用することが必要です。一方、疲労骨折とよばれるものもあり、通常は骨折を起こさない程度の負荷が繰り返し加わった場合に生じます。針金を何度も曲げているうちにいつか二つに折れてしまう、あれと一緒です。

 せぼねにも疲労骨折があり、それが腰椎分離症です。体を反らしたりねじる力が繰り返され、関節突起間部というところが骨折し、せぼねの前と後ろの部分が分離するのです。多くの場合、青年期の過度のスポーツが原因です。成長期のスポーツ選手の3~4割に生じ、日本のプロ野球選手の44.1%が分離症というデータもあります。

 症状は最初は強い腰痛で、体を反らせると増強します。青少年期に発症し、スポーツから離れていったん強い腰痛から解放されますが、慢性的に鈍い腰痛に悩まされたり、中高年になって加齢とともに脚のしびれが出てくるという方も多くみられます。

 診断は初期にはレントゲンだけではでわからないことが多く、MRIで確定します。治療は、骨折なのでせぼね局所の安静、固定です。初期の場合は3カ月で約9割骨がつきますが、レントゲンでも診断できる終末期になるとその確率は0割に下がります。骨がつくのは発症後の数カ月に治療した場合だけなので、初期診断が非常に重要です。かくいう私も腰椎分離症です。10歳から始めたバスケットが原因です。学生時代に整形外科を受診した時には腰痛の原因がわかりませんでしたが、医師になった後で腰椎分離症であったことがわかりました。正しい診断を目指す脊椎外科医を目指したのは、そんなところに遠因があるのやもしれません。

 スポーツをしている子供で反らせると増強する腰痛を持っている場合、青少年期にスポーツをしていて中年以降も慢性的に腰痛が続く場合、この病気を疑う必要があるかもしれません。