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脊椎外科医のせぼね塾② 腰部脊柱管狭窄症

 「散歩や旅行をしたいのに、長く歩けない…」「立っていると、あしがしびれてきて座りたくなってしまう…」。こんな症状、「年のせいかな?…」と思って諦めてはいませんか? それは「腰部脊柱管狭窄症」という病気かもしれません。

 せぼねには“脊柱管”というトンネルが上下に通っており、加齢変化で徐々に狭くなることがあります。狭くなった脊柱管で神経組織が圧迫、刺激されることが、この病気の原因です。本コラムの第一回で、せぼねの機能は①支持性(体重を支える)、②可動性(動く)、③神経保護(神経組織を守る)の3つであり、いずれかの異常が腰痛や肩こりなどを引き起こすと説明しました。「腰部脊柱管狭窄症」は、そのうち③神経保護の機能の異常により生じます。

 「休むとまた歩くことができるのに、長く続けて歩くことができない」のが代表的な症状で、「間欠跛行(かんけつはこう)」といいます。「おしりから足先にかけてのしびれや痛みがあって、歩くとひどくなる」という症状も多く、中年以降に発症し徐々に悪化していきます。

 治療は、症状が軽い場合には薬物療法、リハビリ、ブロック注射などの保存療法が行われます。しかし症状が強く、日常生活に支障が大きい場合は手術が必要となります。神経に対する圧迫を取り除く除圧術という方法が中心になりますが、③神経保護の機能異常に加えてすべり症や側弯変形を合併し、せぼねの①支持性が破綻している場合は、インプラントを用いて脊椎を安定化させる脊椎固定術が必要になる場合もあります。近年は、従来の手術よりもさらに筋肉や皮膚に対するダメージが少ない「MISt(ミスト)(低侵襲脊椎安定術)」といわれる方法を用いる施設もあり、当院でも積極的に採用しています。(日本MISt研究会:http://s-mist.org/

 

 「長く歩けない」とか「あしがしびれる」という症状は、腰部脊柱管狭窄症という病気が原因であることがあります。専門医による正しい診断と正しい治療で、もう一度、散歩や旅行を楽しむことができるようになる可能性があります。諦める必要はありません。

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