脊椎外科医のせぼね塾①
男性:1腰痛、2肩こり、3鼻がつまる。
女性:1肩こり、2腰痛、3手足の関節が痛む。
何のランキングかおわかりになるでしょうか。これは、日本における頻度の高い自覚症状で、厚生労働省の国民生活基礎調査(平成25年)で発表されたデータです。男女ともに1,2位を占めた『腰痛』と『肩こり』、どちらも『せぼね(脊椎)』が原因で引き起こされる症状です。
本コーナーでは数回にわたりせぼねの話をします。今回はせぼねの正常なはたらきやしくみを、次回以降はせぼねに多いトラブルや最新の治療動向について解説します。
せぼねは医学用語では脊椎と呼ばれ、二本足歩行をする人類では身体の支柱として重要な働きを持っています。その機能は①支持性(体重を支える)、②可動性(動く)、③神経保護(神経組織を守る)の3つです。
脊椎は、頭蓋骨の下から足に向かい頚椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、仙骨とよばれる椎骨が積木の様に重なってできています。それぞれの椎骨の間には軟骨組織の椎間板があり、積木同士がばらばらにならないよう連結し体重を支えています(①支持性)。椎間板は骨より柔らかい組織なので、そこで脊椎は動くことができます(②可動性)。そして、各椎骨の中には脊柱管と呼ばれるトンネルがあり、その中を通っている脊髄や馬尾という神経を外から守っています(③神経保護)。脊椎で保護された脊髄や馬尾を通って、手足で感じた感覚は脳に伝えられ、反対に脳から発信された命令が筋肉に伝えられ身体を動かします。筋肉は脊椎周囲にもたくさん存在しており、特に深部にあるインナーマッスルは腰痛やスポーツのパフォーマンス向上に大きく関与していることがわかってきました。
『腰痛』と『肩こり』をはじめとした症状をだす脊椎の疾患は、その①支持性②可動性③神経保護のいずれかの機能異常が出ることによって生じているのです。